半導体株を比較するときに確認したい決算項目

売上高と営業利益の伸び方

最初に確認したいのは、売上高と営業利益です。ただし、売上高だけが増えていても、製造費用や研究開発費が増え、利益が減っている場合があります。

前年同期比だけでなく、直前の四半期から改善しているか、会社が示していた予想と比べてどうだったかも確認しましょう。半導体業界は景気循環があるため、前年との比較だけでは回復のタイミングを把握しにくい場合があります。

営業利益率と粗利益率

営業利益率や粗利益率は、企業が製品からどの程度の利益を得ているかを示します。販売単価の上昇や高付加価値製品の拡大によって利益率が改善している場合、売上高以上に利益が伸びることがあります。

一方、値下げ競争、原材料費の上昇、新工場の立ち上げ費用などによって利益率が低下することもあります。同じ分野の企業や自社の過去の水準と比較することが有効です。

受注高と受注残高

製造装置会社や検査装置会社では、受注高や受注残高が将来の売上高を考える材料になります。ただし、受注が売上として計上されるまでの期間や、受注の取り消し条件は企業によって異なります。

受注高だけを見るのではなく、納期、顧客の設備投資計画、会社の生産能力なども合わせて確認する必要があります。

在庫と設備投資

半導体メーカーの在庫が増え続けている場合、将来の出荷調整や値下げにつながる可能性があります。一方、需要の増加に備えて意図的に在庫を確保しているケースもあるため、決算説明資料で理由を確認することが大切です。

設備投資額についても、将来の成長に向けた前向きな投資なのか、需要を上回る過剰投資になる可能性があるのかを見極める必要があります。

会社が示す業績予想

半導体株は将来の見通しに反応しやすいため、過去の実績以上に、次の四半期や通期の業績予想が重視されることがあります。

売上高や利益の予想だけでなく、AI向け需要、メモリ価格、顧客の在庫、自動車市場、設備投資計画などについて経営陣がどのように説明しているかを確認しましょう。

PERが低ければ割安とは限らない

PERは、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示す指標です。一般にPERが高いほど成長への期待が大きく、低いほど株価が利益に対して低い水準にあると考えられます。

ただし、半導体株は業績の変動が大きいため、PERだけで割安かどうかを判断するのは困難です。利益が一時的なピークにある企業では、PERが低く見えても、その後の減益によって割高になる場合があります。

反対に、工場建設や研究開発への先行投資によって現在の利益が少ない企業では、将来の利益成長を前提にPERが高くなることがあります。

半導体株の株価評価を確認するときは、次の点を組み合わせて比較するとよいでしょう。

  • 自社の過去数年間のPERと比べて高いか低いか
  • 同じ製品分野の競合企業と比べてどうか
  • 来期以降も利益成長が続く見通しか
  • 営業利益率やキャッシュフローが改善しているか
  • 株価にどの程度の成長期待が織り込まれているか

個別株と半導体ETFはどう違う?

個別株は企業ごとの差が大きい

個別株では、特定企業の成長による恩恵を直接受けられる一方、製品開発の遅れ、主要顧客の発注減少、不祥事、競争激化などの影響も集中して受けます。

半導体の技術や企業決算を継続的に確認できる場合は個別株を比較しやすくなりますが、企業名の知名度や株価チャートだけで選ぶと、想定していなかった事業リスクを抱える可能性があります。

ETFは複数の企業に分散できる

ETFは、取引所に上場している投資信託です。半導体関連の指数などに連動するETFを利用すると、複数の半導体企業へまとめて投資できます。

東京証券取引所にも半導体関連のETFが上場しています。海外市場にはSOX指数などを参考に運用される商品もあります。ただし、ETFごとに対象地域、構成銘柄、信託報酬、為替ヘッジの有無が異なります。

半導体ETFであっても、半導体業界全体が下落すれば価格は下がります。また、上位数社の組入比率が高い商品では、実質的に特定企業の株価に大きく左右される場合があります。

半導体株に投資する前に知っておきたいリスク

需要の波が大きい

半導体業界では、需要増加を受けて各社が生産を拡大した後、供給過剰になって価格が下落することがあります。この景気循環は「シリコンサイクル」と呼ばれることがあります。

AI向け半導体が成長していても、すべての製品分野が同時に伸びるわけではありません。スマートフォン向けや車載向けなど、別の分野が低迷する可能性もあります。

主要顧客への依存

売上高の多くを一部の顧客に依存する企業では、その顧客が発注先を変更した場合、業績が大きく変化することがあります。顧客名が開示されていなくても、有価証券報告書などで販売先への依存度が確認できる場合があります。

技術の世代交代が速い

半導体は技術進歩が速く、新しい製品や製造方法への対応が遅れると競争力が低下する可能性があります。一方で、最先端技術の開発には多額の研究開発費や設備投資が必要です。

単に研究開発費が多いかではなく、研究開発が競争力や売上高に結び付いているかを見る必要があります。

株価変動が大きくなりやすい

半導体株は成長期待が高まりやすい一方、期待が後退すると短期間で大きく下落することがあります。信用取引や借入金を使った投資では、予想以上の損失が発生する危険があります。

生活費や近い将来に使用する予定の資金を投じるのではなく、損失が発生しても生活に影響しにくい範囲に抑えることが重要です。

半導体株価はどこで確認できる?

日本株の株価は、証券会社の取引画面、日本取引所グループ、金融情報サイトなどで確認できます。米国株についても、取扱いのある証券会社や海外市場の情報サービスで確認できます。

ただし、サービスによっては株価が一定時間遅れて表示される場合があります。売買を行う際は、利用している証券会社の注文画面で現在値、気配値、取引時間、注文状況を確認してください。

株価を見るときは、その日の上昇率だけで判断せず、次の情報も合わせて確認しましょう。

  • 決算発表日と発表内容
  • 会社が公表した業績予想
  • 出来高と売買代金
  • 過去1年から数年の株価推移
  • SOX指数や米国ハイテク株の動向
  • 為替レートや長期金利
  • 半導体メーカーの設備投資計画

半導体株は業界の成長性と株価水準を分けて考える

半導体は、生成AI、データセンター、自動車、通信、産業機器などを支える重要な製品です。2026年も世界市場の拡大が予測されていますが、業界の成長がそのまま株価上昇を保証するものではありません。

株価は、実際の業績だけでなく、市場予想との差、将来の設備投資、製品価格、在庫、為替、輸出規制、株価の割高感などによって変動します。特に半導体株では、好材料がすでに株価へ織り込まれていることも少なくありません。

まずは企業が担当する工程を確認し、売上高や利益率、受注、在庫、業績予想を比較することが大切です。一つの企業に資金を集中させることに不安がある場合は、半導体ETFを含む分散方法も選択肢になります。短期的な株価変動だけを追うのではなく、自身の資金計画と許容できるリスクを踏まえて判断しましょう。

※本記事は半導体株に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の金融商品や銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。株式やETFの価格は変動し、元本を下回る可能性があります。投資判断は最新の開示資料を確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。

<参考サイト>世界半導体市場統計(WSTS)/米国半導体工業会(SIA)/経済産業省/金融庁/日本取引所グループ/Nasdaq/Reuters/東京エレクトロン公式サイト/アドバンテスト公式サイト/SCREENホールディングス公式サイト